その答えは、「船は簡単に増やせないから」
海運市況の上昇を追い風に海運株が高騰しつづけている。
日本郵船、車LNG船12隻発注で脱炭素対応
独フォルクスワーゲン(VW)がLNG燃料船の使用を実質上の入札条件にし、又トヨタ自動車は直接取引する世界の主要部品会社にCO2の排出削減を求め始めるなど、脱炭素化をめざす大手自動車業界。
車運搬船の保有数で世界最大手の日本郵船は海運業界の燃料転換に大型投資で先手を打つ。
日本郵船は液化天然ガス(LNG)を燃料とする自動車運搬船を12隻発注、金額は1000億円を超える。単体で約100隻の車運搬船を運航(3月時点)しているが、LNG燃料船は1隻のみ。今回の発注分を含め2028年度末までに20隻をLNGに置き換えるという。(6月14日の日経新聞)
日本の造船業界は近年は中国や韓国勢に押され、受注環境は厳しさを増しているが、環境負荷が小さい船舶への需要増は、日本の造船業界の活性化にもつながる可能性があるという。

[9101]日本郵船と[9104]商船三井、[9107]川崎汽船の大手3社は目標株価を修正
- 日本郵船 3000円から6000円
- 商船三井 4300円から7000円
- 川崎汽船 1400円から3400円(既に達成)
6月8日現在の株価
- 日本郵船 5090円
- 商船三井 4870円
- 川崎汽船 3415円

なぜこうなっているのか?
分かりやすく言うと輸出入が盛んで、海運市況が上昇、需要が増え貨物船の運賃が上がり利益が上がるということ。
海運業の場合、船の需要が増えても供給(船の数)は簡単には増やせない。ということがある。
需要に対しての価格が非常に敏感に反応するため海運業の利益が上昇する。
同じ理由でコンテナ会社も同様の動きをしている。
ストレージ事業を手掛けるエリアリンク(Arealink)株も高騰中

この海運業株の動向はバルチック海運指数と共に世界経済の先行指標としても有効な役割を果たす。
バルチック海運指数
ロンドンにある「バルチック海運取引所(Baltic Exchange)」が算出・公表している不定期船の運賃の総合指数で、運賃や用船料をもとに算出され、毎営業日のロンドン時間13時に公表(日本時間22時、サマータイムは21時)
※不定期船は、不特定の航路を不定期に就航する商船のこと。

来期以降の展望
海運価格の高騰で収益が2008年以来の高水準となった海運業今後の見通しはどうか?
逼迫しているコンテナ船の受給バランスが落ち着くのは2022年3月頃と見られている。
この現状から判断するとコンテナ運賃は2022年3月をピークにその後、安定するか緩やかな下落に入るという見方が多い。
これが、株価の下落につながるとは限らないが、今後どこかで調整局面にはいると予想できる。
9月10日現在の株価
[9101] 日本郵船 9880円
[9104] 商船三井 9030円
[9107]川崎汽船 6190円
- 日本郵船は空運貨物の子会社をもつ強みがあり、海運各社のなかではもっとも有力。
- 商船三井はエネルギー海洋事業の伸びが期待できそう。
- 川崎汽船業績予想が控えめで、上方修正の余地あり。