政府・与党は2022年度税制改正で、新型コロナウイルス対策で導入した航空機燃料税の軽減措置を継続する方針を決定。現在の燃料高に加えて、「オミクロン株」でさらなる打撃が予想されるため、2022年度末までの一年間措置を延長し、引き上げ額も小幅に抑えたかたちとなる。
5000億円超の資金流出を乗り越え反撃開始
2020年、年初から2021年9月期までの21ヶ月感に流出した資金は、JALが4145億円、ANAが5622億円と巨額の赤字をだしてきた。
その間、社債の発行や株式の発行、借り入れなど四苦八苦の資金調達でなんとか凌いできた。
ここへ来て、コロナ感染者数の激減、GOTOキャンペーン再開の兆しなど、よい条件が整いつつある。
しかし、最近の原油高が足を引っ張り航空業界が世界的に打撃を受けている。
バイデン大統領がOPECに増産を働きかけており11月4日のOPEC会合に注目が集まる。
コロナ感染者減、旅行需要の高まり、政府の景気対策、そして原油価格の安定も見えてきたとなれば。
悪条件も底打ち、いよいよJAL、ANAの反撃開始となる。
株価について考えてみると、現在価格はJALが2500円、ANAが2700円程度で推移している。コロナ前の価格にはまだかなり遠いのだが、JAL、ANAともに株式発行枚数を増やしてきたため、EPS(一株あたり利益)は、株式を増やした分を差し引くとコロナ前よりは減少する。それでもまだ、1割程度の株価上昇は見込める所だ。
JAL赤字579億円・米2社は黒字
2021年4~6月期業績はデルタ航空やアメリカン航空など米航空大手が最終黒字に転換した。
一方で日本航空やANAホールディングス(HD)の2021年4~6月期業績は最終赤字が続いている。。
日本航空(JAL)が3日発表した21年4~6月期の連結最終損益(国際会計基準)は579億円の赤字(前年同期は937億円の赤字)だった。
貨物輸送が堅調なことと、コスト削減でなどで前年から赤字は縮小したが、旅客数は新型コロナ前の水準には回復していない。
それにしても、日本の航空株が割安な状態であることは間違いない。
ビジネス利用は回復してもコロナ前の8割程度
24年時点でもビジネス利用はコロナ前の8割程度にとどまるとマッキンゼー社は推計する。
JALは昨年10月に格安航空会社(LCC)「ジップエア・トーキョー」で国際線の運航を始めるなど、コロナ後を見据えたビジネス利用に依存しない収益構造の模索が出始めた。
アメリカン航空とサウスウェスト航空が決算を発表
第2四半期の決算を発表したアメリカン航空とサウスウェスト航空
好決算で株価が再上昇している。

アメリカン航空の収入は361%増の74億8000万ドル、旅客数は4400万人と前年同期の5倍となった。
また、サウスウェスト航空の収入は300%増の40億ドルだが2019年と比べるとまだ32%低い水準にある。
連邦政府支援を加算したアメリカン航空の利益は1900万ドル。前年同期は20億7000万ドルの損失を計上していた。
ANA定款変更、発行可能株式数を倍増
一時、前日比135円(5.3%)安の2434円まで下落した。
その理由は
5月19日に発行可能株式総数を10億2000万株と、現行の5億1000万株から倍増させるため定款を変更すると発表。
これにより、増資で株式価値が希薄する可能性を意識した売りが出ている。
これが一般的な報道の内容だが、実際はどうなのか。

自己資本比率を比較すると、たしかに今年度の比率は相当下がっていることがわかる。
しかし、致命的なレベルには至っていない。むしろ、これを改善する目的での定款変更とみる。
又、反落したとはいえ売りのボリュームは低い。今回の定款変更は前回の増資のときから折込済みという判断がされているようだ。
先日の決算発表でもある通り。今後の見通しは悪くないと言える。
航空株は今が買い時
ユナイテッド航空やデルタ航空など米航空大手は帰休中のパイロットを復帰させるなど、海外ではワクチン接種の進展に伴う旅客需要回復に向け準備を進めている。
そんな中、[9202]ANAホールディングスは4月30日、2022年3月期の連結最終損益が35億円の黒字(前期は4046億円の赤字)になる見通しを明らかにした。
航空機の早期退役によるコスト削減、急拡大して業績を下支えしている貨物事業についても更に成長を見込んでいる。
又、ワクチン接種の拡大で旅客需要が回復する見通しだ。
日本の航空会社コロナ後を見据えた動き加速
JAL日本航空はコロナ後の観光需要の復調を見据えて成長戦略を再構築するようだ。
日本航空は4月25日、中国系のLCC(格安航空会社)、SPRING JAPAN(春秋航空日本)を連結子会社化する方針を固めた。
SPRING JAPAN(春秋航空日本は中国系LCCの春秋航空が2012年に設立)
現在春秋航空が大株主で、国内企業のほか、JALも少額を出資しているが、6月中をめどに数十億円を追加出資し、同社株の過半数を取得すると公表。
このニュースを受けて最近下降気味だったJALの株価は急回復、ANAも同様の回復基調となった。

航空業界でビジネス需要が縮小する見通しが強まるなか、コロナ後のLCCの重要性がますます高まると予測されている。
ANAホールディングスも傘下のLCCピーチ・アビエーションの路線網を拡大するほか、22年度をメドに安価な国際線の新ブランドをアジアなどに就航する方針だ。
今年2月20日、ユナイテッド航空の旅客機(デンバー発→ホノルル行)が離陸後エンジントラブルを起こした。エンジンが燃えながら飛んでいる映像は衝撃的だった。

又、バーツが多数落下し、コロラド州の住宅地に降り注いだ。
幸い飛行機は無事にデンバーに戻り着陸、大事には至らなかった。

航空株評価が上がる
そんな事故が有ったばかりだが、むしろ航空株はこれから上昇しそうだ。
航空株や旅行業界株は2020年コロナ禍の影響で下落して以来ある程度の回復はしたもののコロナ前の水準から見れば、まだ半値程度のものが多い。

ドイツ銀行アナリストの高評価
そんな中、アメリカ航空株の評価が上がったと報じられた。
The Motley Foolが報じた記事によるとアメリカンエアー、デルタ、ジェットブルー、スピリットなどアメリカ大手航空株の評価が上昇している。

感染者数の下落とワクチンの投与率の上昇が根拠だが、今後数ヶ月以内に航空業界は回復し、年末までにはほぼ元通りになるという見通しを示したのだ。
日本の航空株は
この傾向は日本の航空株にも影響を与えそうだ。


ANAのほうがJALより回復が遅いのは固定費率の高いANAのほうが、不況時の赤字体質になりやすいことなどが影響しているかもしれない。
日本の航空株は、これまでもアメリカの航空株を追従するような動きをしており、上昇トレンドになりそうな気配だ。どちらも今が買い時かもしれない。
2月26日、日経平均は1200円の大暴落だったが、それでも日本の航空株はほとんど下がらなかった。この現象から見ても、航空株の評価が高まっていると言える。